文進堂 畑製筆所

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【事例5】筆の修理(前編)


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皆さまへ

いつもありがとうございます。

今回も修理のご報告をさせていただきます。

「治りますかーーーー!!」

ある作家様から悲鳴のような連絡をいただきました。

お話を伺うと、ある方から受け継いだ筆で展覧会用に書作していたところ、
ゴソっと毛が抜けたそうです。

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↑右の毛のかたまり(芯)が抜けてしまっています。


冒頭の写真からも分かるように、根腐りしている可能性があります。

一旦、画像で判断をして、現物を工房まで送っていただきました。


現物を拝見して症状を確認したところ、いくつかの原因が分かりました。

①根腐り…やはり、根元の墨が溜まった部分から腐ってしまっています。
②仕立て…他国から焼締めをしていない穂首を輸入して、日本で焼締めをしている仕立てでした。
③浅はめ…穂首の菅込みが甘く、穂首の直径に対して浅くはまっていました。
④軸のサイズ不適合…筆を大きく魅せるために、穂首に合わない大きな直径軸に穂首をはめていました。


通常は他社様の修理は承らないのですが、
毛先が育っていたこと、今はなかなか入手しにく長い羊毛であったこと、
もともと寿命があまり長くない仕立てでしたが、
作家様が墨を使っておられ、お手入れもきれいにされていたこと、
こういった状態でしたので、
この筆はもう一度、蘇らせた方が良いと判断し、
作家様にも事情を説明して修理に着手しました。


書き込みの時期ということもあり、通常よりも短い期間で修理を終える必要があります。

ここからは、ひたすら、この筆と向き合います。

後半に続きます。