先日、あるお客様(F様とお呼びします)からうれしいお手紙をいただきました。
F様は独学で基礎から書道をお勉強されており、
文房四宝、歴史にも精通されていらっしゃいます。
オーダーいただいたのは、
古細微頂光鋒40年極上筆を深はめの仕様、
その他もオーダーいただきました。
心を込めて仕立ててお届けした数週間後、
心のこもったお手紙を送ってくださいました。
お客様に喜んでいただけること。
この瞬間が何よりもうれしく、職人冥利に尽きます。
F様、ありがとうございました。心から感謝しております。
—————————–お手紙の内容—————————————————
文進堂 畑製筆所様
前略、先日はオリジナル書道筆の製作の件で大変お世話になりました。
以前より、畑義幸様が製作される高級羊毛筆(古細微頂光鋒を用いて)の
良さは聞き及んでいたのですが、東京で見つけることが出来ず、
御社のホームページに問い合わせさせていただいたました。
川尻の方なのでメール等でやりとりするのかと思いきや、
一週間内に都内でお会い出来るとは思いませんでした。
不思議なご縁です。
事細かい私の要望も丁寧に聞いて頂き感激しました。
毛の材質、鋒の長さと径の太さを指定し、
そして鋒首のすげ込みを深めに入れていただきました。
川尻筆は、昔から高級書道筆の産地として有名であり、
すべての工程を一人の職人さんが担当されるので心強かったです。
出来上がった筆の素晴らしさは、使うのがもったいないくらい、
私がオーダーする前に想像していたものよりはるかに素晴らしい出来栄えでした。
使い始めの初日は正直運筆に苦労しました。
しかし、使い込むうちに段々と思うように運筆出来るようになってきました。
極細の羊毛筆なので使いこなすのに相当時間を要するであろうと思っていました。
古細微頂光鋒を使うことで、鋒先が力強く紙面をピタッと捉え、
それ故力強い線が書け、鋒先の開閉もスムーズなので、
先を利かせた細い線も難なく書けます。
古細微頂光鋒を100%使用し、すげ込みを深くすることで腰の強さが腰から胴、
のど、鋒先にかけて自然に立ち上げり、腰を強くした兼毫筆より使いやすいです。
毛を皮付きで4~50年熟成させることで最高の状態になるという
文進堂畑製筆所でしか所有していない素材と、
製筆の全ての工程を伝統工芸士畑義幸様の最高の技術で作られた筆は
私の技術レベルでは過分だと思いましたが、
知ってしまったが最後、どうしても欲しくなってしまいました。
長鋒羊毛筆は初めからこちらでお世話になっておけばと思うくらい、
最高の書き味でした。
オーダーしてから1ヶ月程で私の手元に届きましたが、
実際にこの筆を作るのにかかった年月は40年1ヶ月(481ヶ月)かかっていて、
書道筆職人さんとしての矜持と未来の使い手となる人たちへの真心と愛情を感じます。
私も心して使わないといけないなぁと思い、
それと同時に職人さんから遠く離れた私に正しい筆運びを教えてくれているような気持になりました。
これだけ魂のこもった筆は他で手に入れることは出来ず、
文進堂畑製筆所様ならではの筆であると思います。
私のために究極の書道筆を作っていただき有難うございます。
今後またお願いしたいと思いますので今後とも宜しくお願い致します。
敬具
平成二十九年二月吉日
F様のご署名
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