プロデューサー
畑 友里幼い頃より祖父である二代目滿壽視、父である三代目義幸の筆づくりを見てきました。
二代目は若くして筆づくりの道に入り、これからという時に戦争で徴兵されました。
そして戦地から帰還後、筆づくりを再開し、後に三代目の義幸が誕生しました。私が物心ついた時に見てきた二代目の筆づくりは、職人として晩年の光景でした。
二代目と過ごした時間は決して多くありませんでした。
現在、文進堂は三代目の義幸が舵を取っています。
しかし、三代目はもう70歳を超える年齢となりました。かつての二代目の姿と重なることがあります。
彼の残された職人人生の中で、あと何本の筆を生み出せるでしょうか?
きっと多くはないと感じています。
一本一本に命を吹き込んで制作する筆は、彼の生きた証でもあります。
私は彼の生きた証である筆を少しでも多くの方に届けていきたいと考えています。
そして「喜んでくれるのが一番うれしいの。職人冥利に尽きるわ」と常々申し上げている父の言葉。
この言葉の意味“使ってくださる方と職人、双方の喜び”を実現していきたいと存じます。